繰り返し充電して使えるリチウムイオン電池にも寿命があるのですよね。電気自動車のリチウムイオン電池に寿命が来たらどうなってしまうのでしょうか。
電気自動車の電池が寿命を迎えたら、バッテリー交換か車の買い替えが必要です。使用済みの電池は、リユース・リサイクルが進められています。
温暖化対策の脱炭素化に向けて期待される電気自動車(EV)。これまでなかなか普及が進んできませんでしたが、EVの軽自動車が発売されるなど、いよいよ普及が本格化しそうです。それとともに、EVのバッテリーに使用されるリチウムイオン電池の量も増加しており、寿命を迎えた車載用リチウムイオン電池のリユース・リサイクルが注目されています。
リチウムイオン電池の寿命とは
スマホなどに使われているリチウムイオン電池については、多くのメーカーが「バッテリーの最大充電容量が50%にまで落ちた状態」を寿命としています。バッテリー容量100%に相当する電力を充電することを1回として、充電回数500回が寿命の目安とされています。
寿命といっても、すぐに電池として使えなくなるわけではなく、充放電を繰り返すうちに徐々に蓄電できる容量が減って、電池は劣化します。満充電にしても使える時間が短くなってきたら寿命が近づいているということになります。
EVの場合は、バッテリーの劣化が進むと走行性能の低下につながります。国内でEVを販売するメーカーの多くは、バッテリー容量を「8年または16万km」まで保証しており、バッテリー容量が70%以下に減少した場合に無料で修理や交換を行う保証制度があります。
ただ、保証制度の対象外で日常の使用に耐えられないほどバッテリーが劣化した場合、バッテリー交換は高額になるため、交換よりも新しいEVへの買い替えが多くなっています。
再生が進む使用済みバッテリー
- ■車載用・定置用蓄電池の需要推移
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出典:経済産業省
では、使用済みになったEVのバッテリーはどうなるのでしょうか。
自動車業界では廃棄物処理法に基づき、車載蓄電池を無償で回収する仕組みを構築しています。しかし、回収されたリチウムイオン電池のほとんどは産業廃棄物として処分されているのが現状です。
政府は2035年までにすべての新車をEVなどの電動車とする目標を掲げており、EVの需要は急速に拡大する見込みです。車載用リチウムイオン電池の需要も増加傾向にありますが、リチウムイオン電池に必要なレアメタルは産出量・流通量が限られているため、使用済み電池を分解してリチウムやコバルトなどのレアメタルを回収して再利用したり、故障したセルを交換・修理して再利用したりするリユース・リサイクルの二ーズが高まっています。


●使用済みの電池をフォークリフトやゴルフカートなどで使ったり、定置用蓄電池として病院や自治体、コンビニなどに導入されているほか、電圧や容量を変えて再製品化するなどの取り組みが進んでいます。
EV用バッテリーの再生にも成功
日本におけるEVの先駆けである日産自動車は、住友商事とともに使用済みバッテリーを再利用するための会社「4R ENERGY」をいち早く設立。初代日産リーフから役目を終えたバッテリーが出始めた2018年より、使用済みEV用バッテリー再製品化専用工場を稼働させ、EV用のバッテリーを再生して、低価格でのバッテリー交換を実現させています。

EVのリチウムイオン電池の再利用は、資源の有効活用はもちろん、不適切な処理や投棄の防止、環境負荷軽減、そしてEV自体の付加価値向上につながるものと期待されています。
広報紙「MiRaI」Vol.77 2023 新年号 より転載